01 | 開発者
本人について分かってきたことを、
次の理解と支援へつなぐために。
堀越 保和
Kotone Systems 運営・開発
公認心理師・介護福祉士

02 | 開発を続ける理由
私が、Kotone Systemsをつくる理由。
福祉の現場で支援に携わる中で、そして家族として支援を利用する中で、本人について積み重ねられてきた大切な情報が、施設や制度、時間の変化によって、つながりにくくなることを感じてきました。
残す。
大切な情報を失わせにくく
整理する。
理解しやすい形に整える
必要な人へつなぐ。
支援や理解を途切れさせない
その部分をソフトウェアで支えられないか。
それが、Kotone Systemsをつくっている理由です。
03 | 現場の経験から
本人だけを見るのではなく、
本人と環境との関係を見る。
24年間の福祉現場で、本人の特性だけでなく、環境・活動・伝え方・関わり方との組み合わせから支援を考えてきました。
支援現場で考えてきたことを詳しく読む
私は都内の福祉施設で24年間、生活支援員として、知的障害・発達障害・身体障害のある成人の支援に携わってきました。生活介護や就労継続支援B型など、複数の支援の現場を経験しています。
現場で大切にしてきたのは、うまくいかない理由を本人だけに求めないことでした。
同じ人でも、場所が変わる。伝え方が変わる。活動の内容が変わる。関わる人が変わる。それだけで、できることや困り方が大きく変わることがあります。
だから、本人の特性だけでなく、環境、活動、伝え方、関わり方との組み合わせから支援を考えることを大切にしてきました。
ICFの考え方を土台に、ABAやTEACCHなどから学んだ視点を取り入れながら、必要に応じて作業療法士や理学療法士など、他職種の専門性にも学んできました。
一つの理論だけで本人を見るのではなく、さまざまな視点を使いながら、「この人には、どのような環境や支援があれば、その人らしく参加できるのか」を考えることが、私の支援の出発点になっています。
04 | 家族としての視点
支援する側からは見えなかったことが、
家族として見えてきました。
支援の仕事を続ける一方で、家族として療育や福祉サービスを利用する側にもなりました。
療育、教育、福祉など、それぞれに大切な情報があっても、一人の本人の時間軸として見ると、それらが自然につながるとは限りません。
「本人について分かってきたことは、施設や制度が変わったとき、どこへ残っていくのだろう。」
家族として見えてきたことを詳しく読む
支援の仕事を続ける一方で、私は家族として、子どもの療育や福祉サービスを利用する側にもなりました。
療育、幼稚園、教育、福祉。それぞれの場所には、それぞれの役割があり、専門性があり、本人について考えられた記録や支援があります。
けれど、家族としてそれらを行き来すると、同じ本人についての情報であっても、場所が変われば使われる言葉や見る視点が変わり、ひと続きには見えにくくなることがありました。
ある場所で分かってきたことが、次の場所へそのまま伝わるとは限りません。家族が同じことを何度も説明したり、それぞれの支援計画や記録を見ながら、本人についての情報を自分たちでつなぎ直したりすることもあります。
支援する側にいたときには、一つの施設の中から本人を見ることが多くありました。家族の立場になると、療育、教育、福祉などを行き来しながら、一人の本人を長い時間軸で見る必要があることに気づきました。
この二つの立場を経験したことが、
「本人について分かってきたことは、施設や制度が変わったとき、どこへ残っていくのだろう。」
と考えるきっかけになりました。
05 | 考え続けている問い
本人の人生は一つなのに、
情報は場所ごとに分かれている。
それぞれの場所には、その場所だからこそ分かる大切な情報があります。
けれど、本人の生活と成長は、施設や制度が変わっても続いていきます。
だから、場所ごとに分かれた情報を、本人の時間軸の上でつなげて考えられないかと思うようになりました。
06 | 試してきたこと
まず、自分で情報をつないでみました。
家庭・療育・園などの情報
本人理解・環境・活動・
支援条件
時間・場所を越えて
共通点と違いを見る
次の理解・支援へ
使える形へ
単に情報を一つにまとめるのではなく、
同じ本人について考え続けられる形を試してきました。
実際に作ってきた資料・試行について詳しく読む
本人についての情報を、時間や場所を越えて残すにはどうしたらよいのか。
その答えが最初から分かっていたわけではありません。まずは、自分に必要だったものを一つずつ作りながら考えてきました。
家庭、療育、園などにある情報を集め、本人について分かってきたことを長い時間軸で残すための本人理解ポートフォリオ。
集めた情報を、本人の特性だけではなく、環境や活動、支援条件との関係から整理し、教育や福祉など異なる場面へつなぐための資料。
さらに、療育や幼稚園など、それぞれの場所で作った個別の資料を横断して見比べ、場所を越えて共通することと、その場所だからこそ見えていることを整理する資料も作ってきました。
そこで意識していたのは、情報を一つにまとめること自体ではありません。
「できた・できなかった」だけではなく、どのような条件でできたのか。
どのような支援があったのか。
何がまだ分かっていないのか。
そうした違いを残したまま、同じ本人について考えられる形にすることでした。
また、Googleフォームなどを使い、アセスメントからモニタリング、個別支援へ情報をつないでいく仕組みも試してきました。
一つずつ作り、実際に情報を整理してみることで、本人についての情報をつなぐためには、単に記録を集めるだけでは足りないことが見えてきました。
07 | 資料からソフトウェアへ
人だけで続けるには、
重すぎる作業がありました。
本人について丁寧に考えようとするほど、必要な時間と作業量も増えていきました。
人が考える前後にある情報整理なら、ソフトウェアで支えられるのではないか。
そう考え、複数の単体で使えるツールを試作するようになりました。
現在は試作段階です。福祉施設等で実用した実績はありません。
ソフトウェアを試作するまでの経緯を詳しく読む
記録を集め、読み直し、事実と解釈を分け、過去と比較し、場所ごとの差を見て、支援条件を整理する。
そして、その内容を次の支援者や家族が使える形に整え直す。
こうした作業を実際に繰り返していくと、本人について丁寧に考えようとするほど、必要な時間と作業量も増えていくことが分かりました。
だからといって、すべてを自動で決める仕組みにしたいわけではありません。
人が考える前に必要な情報を整理すること。
過去の記録を探しやすくすること。
複数の場面を比べやすくすること。
仮説と観察事実を分けて残すこと。
支援を考えた理由を、次の人へ引き継ぎやすくすること。
こうした部分なら、ソフトウェアで支えられるのではないか。
そう考え、生活の記録、行動観察、本人のプロフィール、場面ごとの支援仮説、振り返り、支援計画との接続などを扱う複数の単体で使えるツールを試作してきました。
これらのツールは、福祉施設や支援職で使うことを想定して作ったものです。
一方で、専門的な内容も多く、実際の現場で使いやすいものになっているかは、まだ分かりません。現在は試作段階であり、福祉施設等で実用した実績はありません。
ツールを作ることで答えが出たのではなく、作ったからこそ、次に考えるべき課題がさらに見えてきました。
08 | 人 × ソフトウェア
考えることまで、ソフトウェアに任せない。
記録を整理したり、過去と比較したり、必要な情報を探したりすることは、ソフトウェアが得意なことです。
AIも、情報を要約したり、複数の視点を並べたり、考えるための候補を出したりすることには役立つと考えています。
けれど、本人を理解することそのものを、ソフトウェアやAIに任せたいとは考えていません。
本人の話を聴くこと。
表情や行動の背景を考えること。
関係をつくること。
専門的・倫理的に判断すること。
支援の方針を決めること。
そして、実際に本人と関わること。
こうしたことは、人が担うものだと考えています。
ソフトウェアができるのは、その前後にある情報を整理し、比較し、残し、必要な人が確認しやすい形にすることです。
- 本人の声を聴く
- 対話する
- 関係をつくる
- 本人を理解する
- 専門的・倫理的に判断する
- 支援を決める
- 実際に支援する
- 記録する
- 整理する
- 探す
- 比較する
- 可視化する
- 履歴を残す
- 考える材料を整える
それが、Kotone Systemsでソフトウェアをつくるときに大切にしている考え方です。
AIについても、情報を整理する、要約する、比較する、複数の視点を並べる、候補を出すといった支援に用い、人による確認・採用・修正・却下を前提とします。
09 | 家族だけに頼らないために
親亡き後を考える。
家族がずっとそばにいられるとは限らない。
本人について積み重ねてきた情報を、将来へ引き継げる形にしたい。
家族として支援を利用する中で、もう一つ考えるようになったことがあります。
それは、親が本人のことを説明できなくなったとき、その人について分かってきたことを、誰が次へ伝えるのかということです。
幼い頃にどのようなことが好きだったのか。
何が分かりやすく、何が負担になりやすかったのか。
どのような環境で安心できたのか。
どんな支援が役に立ち、どんな経験を積み重ねてきたのか。
こうしたことは、診断名や現在の支援計画だけでは残しきれないことがあります。
親亡き後については、家庭によってさまざまな考え方があると思います。
私自身は、家族が将来へ残せるものの一つに、本人について長い時間をかけて分かってきた情報があると考えています。
それは、家族だけが本人の情報を抱え続けるという意味ではありません。
むしろ、家族、支援者、専門職など、それぞれの人が関わる中で分かってきたことが、所属先が変わっても失われず、必要なときに次の人へつながっていくこと。
本人がこれまで生きてきた時間そのものを、
次の支援の手がかりとして残していくこと。
そんな情報のあり方を考えたいと思っています。
現在、施設間で本人情報を共有・継続できる仕組みが実現しているわけではありません。
技術だけでなく、個人情報、権限、同意、運用など、考えなければならないことは多くあります。
人や場所が変わっても、本人について積み重ねられてきた理解が失われにくい仕組みをつくること。
Kotone Frameworkは、そのために何ができるのかを考え、現在つくり始めている基盤です。
